
「米粉のマフィン」という言葉を目にして、小麦粉のマフィンとどこが違うのだろうと、ふと気になったことはないでしょうか。味や食感は変わるのか、つくり方はどう違うのか、選ぶときには何を見ればよいのか。気になりながらも、はっきりとした答えを持たないままになりがちなテーマです。
米粉と小麦粉は、どちらも穀物を粉にしたものですが、その性質は大きく異なります。そしてその違いは、マフィンの食感やつくり方、そして選び方にまで、静かに影響しています。この記事では、農林水産省などが公開している情報をもとに、米粉マフィンと小麦粉マフィンの違いを、グルテンの有無、食感が生まれる理由、米粉そのものの種類、表示から見分けるポイントの順にお伝えします。最後に、米粉の生地だからこそ生きる味わいについて、SOMIOのマフィンを例にご紹介します。
■ いちばんの違いは「グルテン」があるかないか

小麦粉と米粉の違いを語るうえで欠かせないのが、グルテンです。グルテンとは、国連の食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)による国際的な食品規格において、小麦、ライ麦、大麦、オーツ麦またはそれらの派生品に含まれる、塩に溶けないたんぱく質と定義されています〔1〕。小麦粉に水を加えてこねると粘りと弾力のある生地になりますが、その骨格をつくっているのがグルテンです。米粉にはグルテンが含まれないため、米粉でパンをつくるときには、膨らみを得るために小麦のグルテンを加える必要があると説明されています〔6〕。
一方、お米にはこのたんぱく質が含まれていないため、お米を粉にした米粉もグルテンを含みません〔1〕。農林水産省は、米粉のもっとも大きな特徴としてグルテンが形成されないことを挙げ、そのため水を加えたあとも生地の粘りがほとんど変わらず、調理時間に余裕が生まれるとしています〔2〕。また米粉は、油分が少なくさらさらとしているためダマになりにくく、粉をふるう必要がないとも紹介されています〔3〕。
このことは、マフィンづくりの工程に、はっきりとした違いとなって現れます。農林水産省の資料では、スポンジケーキを例に、米粉の生地は時間が経っても粘りがほとんど変わらず、粉を混ぜるときに気泡がつぶれにくいと説明されています〔2〕。同じ資料では、天ぷらの衣を例に、米粉は水を加えたあとの状態が安定していると述べられています〔2〕。生地の状態が安定していて、扱いに余裕がある。これが、つくり方における第一の違いです。
もうひとつ知っておきたいのが、日本独自の「ノングルテン」という基準です。欧米ではグルテン含有量20ppm以下を「グルテンフリー」とするのに対し、農林水産省が2017年に策定したガイドラインでは、グルテン含有量1ppm以下の米粉を「ノングルテン」と表示できると定めています〔1〕。米粉そのものはグルテンを含まないため、この基準は、製造工程で外から混ざり込むグルテンをどれだけ防いでいるかを示すものと言えます〔1〕。
■ 食感の違い。「しっとり」「もっちり」はどこから生まれるのか
農林水産省の資料には、米粉を使った焼き菓子やパンの食感として、「しっとり」「モッチリ」という言葉が繰り返し登場します〔2〕〔8〕。小麦粉のマフィンとは異なるこの食感は、米粉が持つ三つの性質から生まれています。
ひとつめは、吸水性と油の吸収率です。米粉は小麦粉より多くの水を吸う一方で、油の吸収率は低いという、対照的な性質を持っています〔2〕。生地の中に水分を多く抱え込むことから、焼き上がりにしっとりとした質感が残りやすい可能性が考えられます。
ふたつめは、でんぷんの性質です。米のでんぷんは糊化温度が高く、糊化に必要なエネルギーも多いため、焼き時間が長くなります〔2〕。同じ資料では、スポンジケーキの焼成時間の例として、小麦粉の38分に対して米粉は45分という数字が示されています〔2〕。時間をかけてじっくり火を通すことが、米粉の焼き菓子の前提になっているのです。
みっつめは、粉の細かさとでんぷんの状態です。米粉は製粉の方法によって、粒の細かさ(粒度)と、製粉時にでんぷんが傷つく度合い(でんぷん損傷度)が異なります〔7〕。でんぷん損傷度が低い米粉は膨らみが大きく、高い米粉はしっとり感が増すとされています〔4〕。さらに、でんぷんに含まれるアミロースという成分の割合が高いと型崩れしにくくサクサクとした食感になり、低いとしっとり感を出しやすいと説明されています〔8〕。つまり、同じ「米粉」と書かれていても、どんなお米をどう製粉したかによって、焼き上がりの表情が変わる可能性があるということです。
ただし、米粉は小麦粉と同じ配合でそのまま置き換えられるわけではありません。農林水産省の資料では、ビスケットを小麦粉と同じ配合でつくると粉っぽく、ぱさぱさになるため、砂糖や牛乳などを増やす調整が必要だと述べられています〔2〕。米粉のマフィンがしっとりと仕上がっているとき、その裏側には、米粉の性質に合わせた配合の工夫があると考えられます。
■ 米粉にも種類がある。「用途別基準」という目安
米粉とひと口に言っても、その種類はさまざまです。うるち米からつくる上新粉、もち米からつくる白玉粉のように、古くから和菓子に使われてきた米粉のほか、製粉技術の進歩によって、パンやケーキに向く細かい米粉がつくられるようになりました〔6〕〔7〕。
そこで農林水産省は2017年、米粉の品質のばらつきをなくし、用途に合った米粉を選びやすくするために「米粉の用途別基準」を公表しました〔4〕。この基準では米粉を「菓子・料理用」「パン用」「麺用」の三つに分類し、粒度、でんぷん損傷度、アミロース含有率、水分含有率といった指標で用途への適性を示しています〔4〕。日本米粉協会は、この三つの分類を「1番 菓子・料理用」「2番 パン用」「3番 麺用」という番号で表記する用途表記を案内しています〔5〕。
洋菓子やホワイトソースなどには、粒が細かい微細粒粉が向いており、粗い米粉では舌ざわりが悪く、なめらかさが出ないとされています〔8〕。マフィンのようにふんわりと膨らませたい焼き菓子には、細かく製粉され、でんぷんの傷みが少ない米粉が使われている可能性が考えられます。
ここでひとつ、知っておきたいことがあります。米粉にはグルテンが含まれないため、米粉でパンをつくる際には、膨らみを得るために小麦のグルテンを加えることがあります〔6〕。用途別基準の解説でも、グルテンを15〜20%加えると小麦粉と同様のつくり方でパンがつくれると説明されています〔4〕。つまり、「米粉」と書かれていても、小麦由来のグルテンが加えられている製品があり得るということです。小麦を避けたいという理由で米粉を選ぶ場合は、この点を確認しておくことが大切です。
■ 表示から違いを見分ける。米粉マフィンを選ぶときの確認ポイント
米粉マフィンと小麦粉マフィンの違いを知ったうえで、実際に選ぶときには、パッケージや商品ページの表示が手がかりになります。
まず、原材料名です。容器包装された加工食品の原材料は、重量の割合が高いものから順に、もっとも一般的な名称で表示されます〔9〕。原材料名の最初に「米粉」とあれば、その商品でもっとも多く使われている粉が米粉であると読み取ることができます。反対に、米粉が後ろのほうに書かれていたり、小麦粉が先に書かれていたりする場合は、米粉は一部に使われているだけの可能性が考えられます。
次に、アレルギー表示です。小麦は、表示が義務付けられている「特定原材料」のひとつで、2026年4月にカシューナッツが加わり、現在はえび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)の9品目が対象です〔10〕〔11〕。前の章でお伝えしたように、米粉製品にも小麦グルテンが加えられていることがあるため、小麦を避けたい方は、アレルギー表示に「小麦」がないかを確かめておくと安心です。
また、「本品製造工場では小麦を含む製品を生産しています」といった製造環境についての注意喚起表示は、製造者の任意で記載されるもので、義務ではありません。そのため、この表記がないことだけを根拠に、小麦を扱っていない製造環境だと判断することはできないとされています〔12〕。厳密に避けたい方は、ブランドが公開している製造工程の情報や、ノングルテン認証の有無〔1〕を確認し、記載が見当たらなければ購入前に問い合わせておくと安心です。
最後に、米粉の産地や種類が書かれているかどうかも、ひとつの目安になります。前述のとおり、米粉は種類や製粉方法によって仕上がりが変わるため〔4〕〔8〕、素材について丁寧に説明しているブランドであれば、つくり手がどんな考えで米粉を選んでいるのかを知る手がかりになります。
■ 米粉の生地と、隠し味の力。SOMIOのマフィンの場合

ここまで米粉の性質を見てきましたが、大切なのは、その性質がお菓子としてどんな味わいになるかです。SOMIOのマフィンを例に、ご紹介します。
SOMIOのマフィンは、お味噌と米粉、そして植物由来の素材だけでつくられた、グルテンフリー&ヴィーガンの米粉マフィンです〔13〕。定番のスモーキークラウンは、表面はカリッと香ばしく、中はしっとりとした食感で、麦の食感を程よく残しながら焼き上げています。甘さを控えた後味は、食事にもスイーツにも合わせやすい味わいです〔14〕。ブルーベリーキングは、砂糖不使用の果実そのままのブルーベリーがゴロゴロと入り、焼き菓子でありながら瑞々しさを感じられる仕上がりです〔15〕。まろ蜜ブリュレは、有機黒砂糖でつくる自家製の黒蜜と、特製の麹小豆を詰め込んだ和のマフィンで、生地には有機きなこを練り込み、割ったときにきなこの香ばしい風味が広がります〔16〕。
そのしっとりとした食感と、甘さの奥にあるコクや旨み。その理由のひとつが、隠し味に使っている「お味噌」です。スモーキークラウンでは、麦味噌ならではの深いコクと旨みがひと口ごとにゆっくりと広がり〔14〕、ブルーベリーキングでは、お味噌のやさしい塩味が、ブルーベリー本来の甘みと香りをいっそう引き立てています〔15〕。米粉のしっとりとした生地に、日本の伝統的な発酵食であるお味噌のコクと塩味が重なる。それが、小麦粉のマフィンとはまた違う、SOMIOのマフィンならではの味わいです。
SOMIOでは、マフィンごとに異なるお味噌を使い分けています。スモーキークラウンの麦味噌は、宮崎県宮崎市で、農薬も肥料も使わない自然栽培の麦と大豆を使い、自然の気温に委ねて3ヶ月熟成させたものです〔17〕。ブルーベリーキングの調合味噌は、長野県飯田市で、天竜川とアルプスの山々に囲まれた土地のお米で米麹を仕上げ、12ヶ月熟成させています〔17〕。まろ蜜ブリュレの米味噌は、佐賀県鹿島市の天然水を使い、昔ながらの陶器の「かめ」で寝かせたものです〔17〕。一つひとつのお味噌に、それぞれが生まれた土地があります。
また、SOMIOのお菓子は国産の米粉を使い、管理栄養士の監修のもと、保存料を使わずにつくられています。焼き上げたマフィンは、湿度を保った冷気で包み込むように均一に急速冷凍することで、乾燥を抑え、焼きたての風味を閉じ込めてお届けしています〔13〕。お味噌そのものに興味を持たれた方は、SOMIOの公式オンラインショップで、一つひとつのお味噌について知ることができます〔13〕。
■ まとめ:違いを知ると、選び方が変わる
米粉マフィンと小麦粉マフィンの違いは、まず、グルテンがあるかないかにあります。グルテンを含まない米粉は、水を多く吸い、油を吸いにくく、でんぷんの性質も小麦粉とは異なるため、しっとり、もっちりとした食感が生まれやすい一方で、小麦粉と同じ配合では粉っぽくなりやすく、米粉に合わせた配合の工夫が欠かせません。また、米粉にも種類があり、粒の細かさやでんぷんの状態によって仕上がりが変わります。そして、「米粉」と書かれていても小麦グルテンが加えられている製品があるため、小麦を避けたい方は、原材料名とアレルギー表示を確かめておくと安心です。
違いを知ることは、選び方の基準を自分の中に持つことでもあります。しっとりとした食感を楽しみたいのか、小麦を避けたいのか、素材の背景まで大切にしたいのか。その答えに合うひとつを、静かに選んでいただけたらと思います。米粉のマフィンという選択が、日々の小さなご褒美として、暮らしに自然に馴染んでいきますように。
■ 参考文献・出典
〔1〕農林水産省/米粉のノングルテンの第三者認証と製造工程管理JAS(米・米粉情報まとめサイト OKOME-SUMMARY)/https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/08/rice_flour_charac_teristic_02.html/2026年9月28日閲覧
〔2〕農林水産省/米粉の調理科学(米・米粉情報まとめサイト OKOME-SUMMARY)/https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/08/rice_flour_charac_teristic_05.html/2026年9月28日閲覧
〔3〕農林水産省/広報誌aff 2020年11月号「広がる米の可能性 カラダにやさしい『米粉』の魅力」/https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2011/spe1_03.html/2026年9月28日閲覧
〔4〕農林水産省/米粉の用途別基準(米・米粉情報まとめサイト OKOME-SUMMARY)/https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/08/rice_flour_charac_teristic_03.html/2026年9月28日閲覧
〔5〕日本米粉協会/米粉用途別基準/https://www.komeko.org/standard//2026年9月28日閲覧
〔6〕農林水産省 東海農政局/米粉の種類と用途/https://www.maff.go.jp/tokai/seisan/shinko/komeko/type.html/2026年9月28日閲覧
〔7〕農林水産省/米粉の種類と特性(米・米粉情報まとめサイト OKOME-SUMMARY)/https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/08/rice_flour_charac_teristic_01.html/2026年9月28日閲覧
〔8〕農林水産省/米粉の利用(米・米粉情報まとめサイト OKOME-SUMMARY)/https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/08/rice_flour_charac_teristic_04.html/2026年9月28日閲覧
〔9〕東京都保健医療局 食品衛生の窓/加工食品(原材料名)/https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/hyouji/shokuhyouhou_kakou_ingredients.html/2026年9月28日閲覧
〔10〕東京都保健医療局 食品衛生の窓/加工食品(アレルゲン)/https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/hyouji/shokuhyouhou_kakou_allegy.html/2026年9月28日閲覧
〔11〕消費者庁/食物アレルギー表示に関する情報/https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy//2026年9月28日閲覧
〔12〕食物アレルギー研究会/加工食品のアレルギー表示(食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022)/https://www.foodallergy.jp/2022-nutrition-dietary-guidelines/ndg2022-7//2026年9月28日閲覧
〔13〕SOMIO 公式オンラインショップ/森のマフィン【初回お試し限定BOX】/https://www.somio.jp/SHOP/muffin-set-001.html/2026年9月28日閲覧
〔14〕SOMIO 公式オンラインショップ/Smoky Crown/スモーキークラウン/https://www.somio.jp/SHOP/muffin-002.html/2026年9月28日閲覧
〔15〕SOMIO 公式オンラインショップ/Blueberry King/ブルーベリーキング/https://www.somio.jp/SHOP/muffin-004.html/2026年9月28日閲覧
〔16〕SOMIO 公式オンラインショップ/Maromitsu Brulee/まろ蜜ブリュレ/https://www.somio.jp/SHOP/muffin-010.html/2026年9月28日閲覧
〔17〕OMISONOMORI(おみその森)/OMISONOMORI パンフレット(2025年11月版)

